今日は私の周りで少し議論になった、購入頻度と売上に関する関係を少し考えてみよう。
売上に関しては色々な考え方があるが、今日は以下の方程式を前提として考える。
売上 = 単価 x 購入者数 × 購入数 × 購入頻度
シンプルな法則は淀みなき真実であり、売上 = 単価 x 数という表現もできるが、これだとシンプルすぎる。今回はもう少し深く考えたいため、数に関しては、購入者数と、一人あたり購入数と、購入頻度に分解する。特に今回は購入頻度に着目してみる。購入頻度に関するポイントは”感覚的”耐用年数と、"心理的"処分コストである。
・”感覚的”耐用年数が短いと、購入頻度が多くなる。
トイレを例として考えてみよう。
新居を建てる際に設置したトイレは大抵1年では壊れないし、飽きがくることもない。だから壊れるまで買い換えない。同じく機能的な耐用年数は数十年ある例の代表選手として、車がある。同じく基本的には1年で壊れないが、面白いことに車はトイレと違い、まだ使える車も2年くらいで下取りに出し、その時欲しい新しい車に買い換えるという事がよく発生する。
この違いは、感覚的な耐用年数が影響している。つまり機能的には動いても(機能的な耐用年数は長くても)、感覚的に飽きやすいものは類似製品が欲しくなるのだ。トイレはバリエーションも少なく、感覚的耐用年数が長いため、買い替えの動機が生まれない。
ではどうしたら、トイレも車のように"感覚的"耐用年数を下げることができるのか?まず最初に頭に浮かんだのは毎年12色づつ新色を出すケースだがトイレではうまくいかないだろう。ユニクロや車では上手くかもしれないが、トイレは他者からの視線や評価されることが数が少ないので、お洒落買い替え効果は弱い。
また工事不要の温水式便座でさえ、”新しい便座買ってきたよ!”"壊れてないけど変えたい!"と家電量販店で製品を購入し、颯爽と帰宅するイメージが湧かない。これは二年前の便座と、今の便座で差が感じられないからだ。iPhoneは現物をたとえ見ていなくても、二年経てば新機能が期待できるので購入しそうだが、トイレにはそれがない。
・”心理的”処分コストが少ないと、購入頻度が多くなる。
ただし、機能updateは買い替えの必須条件ではない。なぜならこの理屈だと、車を乗り換える状況が説明できないからである。
車は機能が対して変わらない、時にはより古いクルマを中古で購入することさえある。これを説明するのが二つ目のポイント処分コストである。簡単に処分できるものは、入れ替えやすいのだ。
車は電話一本で、家に人をあげることもなく、即日売ることが出来る。しかしトイレだと、現状調査をして、工事日も家の中に人を入れ、工事をして、やっと今のものが無くなる。処分する際の時間的コストが全然異なるのである。
特筆すべきは、このコストには"使えるものを捨てる"心理的コストも含まれることであろう。
トイレは大げさになるとしても温水式便座は工事不要で取り替えられる。それでも取り替えない。なぜなら取り替えると、今機能している温水式便座を捨てることになり、これがじわじわと人間の心理にストップをかけるのだ。使えるものを捨てるという心理的コストは予想以上に大きい。その点、車や本はリサイクルという自分の心に優しい廃棄方法があるので、比較的楽に手放すことができるのである。
・総括
売上を構成するもののうち、購入頻度を増やすには、飽きが定期的に来るしくみ、処分コストを低く”魅せられる”しくみを作ることが大切である。
トイレを例に考えると、見た目の変化だけで買い替えは難しそうではあるが、例えば今のトイレなら充電用の USB端子付き、その先のトイレには無線給電機能、その先の先にはBluetoothプロジェクター機能、、、etcと毎回機能を付加し、今のトイレが以下に寂しいものか印象づけるべきである。同時に処分コストに関しては下取りして海外に中古として販売してもらえる等の”自分への言い訳”があると良いだろう。
捨てやすいから変えやすいもの一例をあげると服、靴、本、車、バイクあたりであろうか。捨てづらいから変えづらいものは結構あるように感じる。ラグ、冷蔵庫、洗濯機、マットレス、トイレ、風呂etc...捨てるという心理的コスト、侮るべからずである。
0コメント