"やめられる"と"やめられない"。デザイン思考のポイントはやめる勇気と流儀。

最近特にデザイン思考を用いた仕事をしているのだが、よく相談を受けるのがプロジェクトの終わらせ方。今日のトピックは嫌われる勇気、、ではなく"やめる勇気"である。

ちなみに、デザイン思考を聞いたことがなく、何それ美味しいの?という方や、知ってるけどやったことがない人は、ITOKIのガイドブックをみながらまずは一度やってみればいいと思います。このガイドブックはとても良くまとまっており、初学者におすすめです。

https://www.itoki.jp/catalog/special/designthinking/



ちなみに一回やってみた人、ちょっと先取りしてからやりたい人にはこの本がおすすめです。ありがちな失敗事例が載っていて参考になります。(とはいえ、実際自分で失敗しないと必死感が足りず結局失敗することが多い気がしますが)

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さて、最近周りで取り組んでいる人からの相談を受けていて感じたのが、"結局やめられない問題"です。


・なんのためにDesign Thinkingをするのか

Design Thinking(デザイン思考)とは色々な定義があるのですが、私は”人間を中心とした、問題解決のいちスタイル”であると考えています。SWOT分析で整理した自社の強みを最大限活かす問題解決でもなく、最新技術をふんだんに使った問題解決でもなく、あくまで人間=ユーザーに「この問題をこう解くとはあっぱれ!最高!」と言わせることを第一に進めるイメージです。故に、時には自社アセットを使ってなかったり、技術も古くて地味なものだったりしますが、そこはユーザーの抱える問題が解決できていれば全く問題ありません。


このようなスタイルや、思考法をなぜするのかという理由のひとつに、”低リスクでプロジェクトを進められるから”という理由があります。ざっくりいうとユーザーを観察して、ユーザーの困り事を分析して、それを解決するプロトタイプを見せてコメントをもらい、改修改善して、売れそうなら量産することになるからです。この場合、大きくユーザーのニーズに外れたものはどこかで「あれ、これ売れないぞ!ユーザーが喜んでないぞ!」と気付くことができるため、とりあえずスピード重視で数千万で注ぎ込み製造したけど全然売れない!的なハイリスク・ハイリターンな投資をせずに製品やソリューション開発ができます。



・しかし終わらないプロジェクト、成功するまでやめられない仮説検証

しかし、ここまでは建前の話です。実は企業でデザイン思考に取り組む際は、実はこの低リスクというメリットが無くなるケースが多いように感じますです。具体的には、駄目だと判明したプロジェクトをグダグダと進めるケースがとても多いです。組織として失敗や撤退、ピボットを表面上はナイストライ!と言っているものの、本当にどこまで評価されるのか社員が心の底から信じていないと、ほとんどのケースでこのような状況に陥ります。


デザイン思考では早期に問題に気づけるメリットを活かし、無駄な投資を避けるべきです。プロトタイプをして、「ああこれ売れないな。」と分かったら直ぐ止めて、別のアプローチや別の問題に対して取り組めることこそが、デザイン思考の価値と言えます。しかし、特に大企業でハマりがちなのが、問題に気づいたものの「今更、やっぱり駄目でしたとは言えない、、」と考え、見ていて苦しい程、時間とお金と費やして、結果を出そうとするプロジェクトです。



・第二の罠、デザイン思考は説明しづらい

デザイン思考も万能ではありません。弱点のひとつとして万人が理解できる形で説明しづらいという弱点があります。なぜならそこにはロジックを積み上げた数字や、膨大な調査数もないため、"調査の結果から私はここがポイントだと思います”という、当事者のひらめき=インサイトをベースにGo/NoGoを判断し、進めていくことになるからです。なので、当事者と意思決定者が異なる場合、調査企画をしている当事者は絶対イケると思っても、意思決定者に伝わらず結局従来手法と同じぐらい時間をかけて説明資料を作らせられたり、当事者は絶対無理だと思っても、撤退を納得させるだけの説明資料を作らせられ、結局何も産まずに時間だけ流れることになります。



・ポイントは企画実行者が撤退権限をもつこと。やめても怒らないこと。

ではデザイン思考を用いたプロジェクトを成功させるにはどうしたらよいのでしょうか?

まず、実際に企画調査を行う人が撤退権限をもつことが挙げられます。本来は全決定権を持ちスピード感をもって進められるとベストですが、最低でも撤退権限は与えましょう。これにより会社に馬鹿みたいな投資をさせないため、正義感をもって、低いモチベーションで、出来ない理由を定量的にお金をかけて調査し、論理的に整理し、報告書にまとめる時間が地球上からなくなります。ほら文字で見るだけでも、少し良い世界になると思いませんか?

ふたつめは撤退に対して一切のリスクを負わせないことです。常日頃の態度にもでるので、心からそう思えないならバレます。あなたがもしプロジェクトチームを評価する立場で、彼らの撤退やピボットに対し、勇気ある行動だと心から思えないなら、デザイン思考なんてやめて、従来通りいきましょう。別に正解は一つだけじゃない。たぶん。


もちろん企画調査を行うメンバーのスキルや知識レベルも重要です。原則、彼らのインサイトを信じるべきですが、誤った手法や、知識不足からインサイトがおかしなことになっている場合は、助言を与え良き方向にマネジメントするのも大切です。ただし、中途半端な助言では「俺らのインサイトはやった人にしかわからない」と反発することもあるので、助言を与える場合はしっかりと時間をとり、概要だけのアドバイスだけでなく、共に企画調査を行うレベルでコミットし、議論を通じて正しい方向に導きましょう。もし、そこまでの時間がないのであれば、いっそ無条件にやらせてみた方が良い結果につながると思います。調査もせずに助言だけしてると、そもそも信頼感が失われ、やらせれ仕事になります。こうなるとデザイン思考うんぬんでなく、チームとして溝ができ、長期的に悪影響が残るので注意しましょう。


デザイン思考もあくまでツールのひとつです。なので組織の特性、状態に応じて、特効薬になる場合もあれば、毒になる場合もあります。用法用量を守って、正しく使うことが大切です。



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